日本のテストはなぜ「源泉かけ流し」方式が多いのか?

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日本で行われる様々な試験では、試験の実施毎に新たな問題を作成し、試験終了後にその問題をインターネットで公開する、ということが当たり前のように行われています。一度使用した問題は、全く同じ内容のものがそのまま使われることはほとんど無く、一度だけ使われてあとは過去問として公開される、温泉に例えると、「源泉かけ流し」の方式が多く採用されています。

しかし、世界的に見ると、そのよう実施方式は決して主流ではありません。皆様もご存知のTOEFLやTOEICなど、グローバルで実施される試験の多くで、テスト問題は非公開となっています。

では、どのような理由でテスト問題の公開・非公開が決められているのでしょうか?

実は、非公開にしている試験の多くは、問題を繰り返し使用することでテストの品質を担保しているのです。本番実施前の予備テストや、本番のテストで実施した結果を分析し、それぞれの問題の性質(難易度や識別力、すなわち、受験者の実力を見分ける力)を特定した上で、受験者の能力を正確に測定する方式が使用されています。受験者ごとに異なる問題が出題されても、能力を正確に測定することができるため、一斉受験ではなく随時受験を行っても公平性を確保することが可能、という特長があります。このような試験では、試験問題を公開すると、その問題を事前に学習する対策が行われることで、正確な能力の測定ができなくなるため、試験問題を非公開にしているケースが多いのです。

では、日本のテストではなぜ試験問題を公開しているのでしょうか?日本の試験では、同じ日、同じ時間で、全国で一斉に受験する一斉受験が多く行われます。そのような試験では、毎回新しい問題が毎回作成され、受験者全員が、まだ誰も見たことがない新しい問題を解くわけですから、たとえ試験問題の性質が特定されていなくても、皆が同じ条件で受験することで公平性が保たれます。また、実施後に試験問題を公開することで、試験の内容に問題がなかったことを、客観的に判断できる材料を提供できるため、透明性を確保できる、ということがあります。

また、現在実施されている国家試験などの公的な試験の問題が公開されているのは、政府の方針によるところも大きいと考えられます。1999年の内閣府の閣議決定で、一部の国家試験に対し、「資格取得の容易化」のため「試験問題の公表・持ち帰りの推進」をすることが決定されたことや、2011年に総務省から、すべての国家試験に対し、「習得すべき知識・技能の目安」「試験の透明性・客観性を確保」のために、「インターネット等により積極的に無償で公開すること」との勧告が出されたことから、公的な試験や民間試験でも積極的にインターネット等で過去問を公開するようになりました。

しかし、毎回新たな問題を作成し、テストの品質を高く保つ、というのは非常な困難を伴います。また、同時に受験した人の公平性は担保されますが、違う時期に受験した人同士の公平性を簡単には担保することはできません。例えば、年1回実施して問題を公開している資格試験で、異なる年度に受験した人が、本当に同じ基準で合否判定されているのかは、確認が非常に困難です。そのような状況の中で、公平性を確保するために、試験の主催団体が非常に苦労されています。

温泉なら「源泉かけ流し」が有り難いのですが、試験において、日本で主流の「源泉かけ流し方式」、本当にこのままでいいのでしょうか?